私は2017年6月3日(土)、日本地方政治学会において、発表を行います。以下は、その概要です。
日本一の環境基本条例を目指して
厚木市議会議員 横浜国立大学大学院修士課程 高田ヒロシ
環境政策は大事であることはわかるが、何をしたらいいのかわからない。これは大方の地方自治体における実情ではないか。私は今回の発表において、現時点における厚木市環境基本条例の私案を紹介する。また、現在、議員主導で条例案を作成しつつある点や、その過程で重要あるいは必要となった市職員との調整・協力関係にも触れる他、地方議員が条例案を作成するに際しての「ハードル(障壁)をできるだけ軽減する方法」も提案したい。
1993年の生物多様性条約発効を境に、世界の流れは自然保護から生物多様性へとシフトしつつある。これは、「自然を守る」から「保全しながら利用する」への軸足の変化を意味する。 しかしながら、多くの地方行政は、いまだその対応に苦慮している段階である。残念ながら厚木市も例外ではない。現状の厚木市環境基本条例は、多分に抽象的な宣言的規定であって具体的な政策条例とはなっていない。
現市長の小林常良氏は、2月議会一般質問において、「条例の改正に取り組む」と答弁した。これは私の「1986年制定の厚木市環境基本条例を全面的に改正する考えは」との質問への答弁である。そこで私はその直後より、厚木市環境政策課や学芸員、都市計画課、教育委員会等と協議を開始した。そこでは、①原案作成(draft) → ②大学研究者等からの助言(advice) → ③市職員との協議(check) → ④原案修正(improvement)、というサイクルでの検討により、「大学等の研究機関の知見+行政の現場感覚+議会質疑」を活用した、完成度の高い制度設計を目指している。
「環境」については、人々の価値観は実に多様である。「環境」の幅広さは、医療のそれと似ている。専門分野は実に多岐にわたる。縦割り行政のもと、どの分野にも対応できる人員を行政内部だけで用意することは無理である。結果として見落とされた分野の希少種への配慮を欠いたままで公共工事計画が発表され、論争となる。その種の事例は全国的に枚挙にいとまがない。
こういった行政組織内の障害についても、議員として適切な条例を提案することで打破したいと私は考えている。工事発表後の予期せぬ反応が最小限となれば、職員の不要な心労をなくす効果が期待できる。また、住民にとっては、次世代への住環境の継承や環境教育等を行う具体策としたい。
最後に、今回、貴重な発表の機会を与えて頂いたことに感謝している。また本発表が、他の地方議員や地方行政研究者にとって少しでも役に立つことが出来れば、幸いである。