趣旨採択(賛成)で大丈夫?/厚木市長の在任の期数に関する条例への陳情
2018年6月厚木市議会
「あの陳情に趣旨採択でいいんですか?」...。これは、ある記者の言葉です。厚木市議会は2018年6月、「市長の連続3期を超える多選禁止の実施」を求める陳情に賛成多数で趣旨採択としました。
現職の市長が初当選した際、4期目を目指した市長(当時)に対し、「多選を問う」とのスローガ ンを掲げたのは今の市長です。そして、「3期までに自粛」とする条例を自ら出したことが事の発端です。
趣旨採択に賛成した議員は一様に、2007年に条例が制定された際の答弁を根拠にしていました。私は陳情に反対しました。「4選禁止」=「願意は妥当」とする法律上の理由が何も見つからなかったためです。
趣旨採択とは? |
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厚木市議会の「請願・陳情の審議の流れ」によると、『願意は妥当であるが、実現性の面で確信が持てない場合に、不採択とすることもできないとして採られる決定方法』。 |
件名 | 「厚木市長の在任の期数に関する条例」の実施を求める陳情 |
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陳情の趣旨 | 同一の者が長期にわたり在任することによる弊害を防止するこの条例は、とてもいいと思います。 |
陳情の項目 | 市長の連続3期を超える多選禁止の実施を求めます。 |
厚木市長の在任の期数に関する条例 平成19年12月21日 |
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(目的) 第1条 この条例は、市長の職に同一の者が長期にわたり在任することにより生じるおそれのある弊害を防止するため、市長の在任の期数について定め、もって清新で活力ある市政運営を確保することを目的とする。 (在任の期数) 第2条 市長の職にある者は、連続して3期(各期における在任期間が4年に満たない場合も、これを1期とする。)を超えて在任しないよう努めるものとする。 2 市長の職の退職を申し出た者が当該退職の申立てがあったことにより告示された市長の選挙において当選人となり引き続き在任することとなる場合においては、当該退職の申立てに係る選挙の直前及び直後の期を併せて1期とみなして前項の規定を適用する。 附 則 この条例は、公布の日から施行する。 |
以下は、反対討論の中で私が述べたクイズです。
クイズ1 | 「厚木市長の在任の期数に関する条例」とは、誰のこと? |
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クイズ2 | 陳情者は、陳情の趣旨として、「同一の者が長期にわたり在任することによる弊害を防止するこの条例は、とてもいいと思います」と主張。これについて、条例第1条「市長の職に同一の者が長期にわたり在任することにより生じるおそれのある弊害を防止するため」とある。内容に違いは? |
クイズ3 | 陳情者は、「市長の連続3期を超える多選禁止の実施を求めます」と主張。条例第2条では、「市長は、3期を超えて在任しないよう努める」とある。内容に違いは? |
クイズ4 | 判断基準は、条例の文書? 条例が作られた時の答弁? |
クイズ5 | 条例第2条には、「3期を超えないよう努める」とある。何を根拠に、陳情者が主張する「3期を超える多選禁止」を妥当だと判断できる? |
クイズ6 | 市長の任期が3選を超えることを禁止する国の法律は? |
以下は、私の反対討論です。
厚木市内に住む一人の男性が出した【陳情第16号】件名「厚木市長の在任の期数に関する条例」の実施を求める陳情について、討論を致します。
条例は、地方自治体の法律です。討論の場であり法律の話ですから、義務教育を終えた市民にとっても、出来るだけわかり易く話すことを心掛け、皆さんお一人お一人にクイズ形式でお尋ねします。幸い、陳情者の文書は、短いためクイズにしやすいと云えます。
1つ目のクイズです。「厚木市長の在任の期数に関する条例」とは、誰のことを指していますか? 現職の市長だけでしょうか? それとも、現職を含む今後すべての厚木市長を指していますか? 答えは、「現職を含む今後すべての厚木市長」です。
2つ目のクイズです。陳情者は、陳情の趣旨として、「同一の者が長期にわたり在任することによる弊害を防止するこの条例は、とてもいいと思います」と主張しています。これについて、条例第1条「市長の職に同一の者が長期にわたり在任することにより生じるおそれのある弊害を防止するため」とあります。言っている内容に違いはありますでしょうか? ありませんね。陳情の件名及び陳情の趣旨は、ここまでは特に問題はありません。しかしながら、次の陳情の項目はいかがなものでしょうか?
3つ目のクイズです。陳情者は、陳情の項目として、「市長の連続3期を超える多選禁止の実施を求めます」と主張しています。条例第2条では、「市長は、3期を超えて在任しないよう努める」とあります。言っている内容に違いはありますでしょうか? ありますね。「多選禁止」と「3期を超えないよう努める」とでは大違いです。
4つ目のクイズです。厚木市の法律である条令が課題となった場合、判断基準は、その文書か、それとも、条例が作られた時に誰が何と言ったのかのどちらでしょうか? 答えは、「条例の文書」です。これは、総務企画常任委員会で議論となりました。法律を読む際は、政治的または感情を加えて読むものでないことは云うまでもありません。
先の総務企画常任委員会では、この陳情は趣旨採択で賛成多数となりました。そもそも、趣旨採択とはなんでしょうか。厚木市の「請願・陳情の審議の流れ」によると、『願意は妥当であるが、実現性の面で確信が持てない場合に、不採択とすることもできないとして採られる決定方法』とあります。一般的には、予算のことを指します。願意とは、あまり使われない言葉ですが、願うという字に意見の意の二文字です。その意味は、何かを願う気持ち。或いは、願い出ていることの主旨・内容です。
5つ目のクイズですが、厚木市長の在任の期数に関する条例第2条には、「3期を超えないよう努める」とあります。何を根拠に、陳情者が主張する「3期を超える多選禁止」を妥当だと判断できるのでしょうか? この陳情を趣旨採択にするとしたら、厚木市の「請願・陳情の審議の流れ」に反してしまいます。それどころか、せっかく制定された「厚木市長の在任の期数に関する条例」の屋台骨そのものを崩してしまいます。この条例は、2018年6月議会を以て、自粛が禁止へと転換あるいは上乗せされることになります。
最後に、6つ目のクイズです。市長の任期が3選を超えることを禁止する国の法律は、あるのでしょうか? 私には見つけることが出来ませんでした。
これまで6つのクイズを通じて、『市長の連続3期を超える多選禁止の実施を求めます』と主張している陳情をどう思いますか? 総務企画常任委員会でも申し上げましたが、この条例が議会で議論された際に、どの部長が何と言ったかが判断基準ではありません。問われているのは、私たち厚木市議会議員一人一人の条例を読む力です。
趣旨採択という方法は、『グレーだからOKなんだ』とは言い切れません。何を根拠に陳情者の願意が妥当だと市民に法律上の説明が出来るのでしょうか? 結果として、この陳情の願意は妥当だとする議員が多く、趣旨採択となった場合、「厚木市長の在任の期数に関する条例」は、どなたかが改正案を今年12月議会までには議員提出議案で出されることが望ましいと思われます。いかがでしょうか?
以上、私は客観的な立場から陳情と厚木市の条例その他を読み込み、討論を致しました。私には、陳情者が主張する「3期を超える多選禁止」を妥当だと判断できる根拠が何も見当たりません。従いまして、【陳情第16号】「厚木市長の在任の期数に関する条例」の実施を求める陳情には反対致します。