賛成で大丈夫?/厚木市長の在任の期数に関する条例への陳情
2018年12月厚木市議会
条例は、自治体独自の法律です。議員は、政治的あるいは感情、保身などを基準に条例を読むものではありません。厚木市議会は2018年12月21日、厚木市長の在任の期数に関する条例の誠実な履行を求める陳情を賛成多数としました。私は陳情に反対しました。努力を強制することは出来ないためです。
件名 | 厚木市長の在任の期数に関する条例の誠実な履行を求める陳情 |
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陳情の趣旨 | 小林市長が平成19年12月に制定した同一の者が長期にわたり在任することにより生じるおそれのある弊害を防止するこの条例の誠実な履行が、必要だと思います。 |
陳情の項目 | 厚木市長の在任の期数に関する条例の誠実な履行を求めます。 |
厚木市長の在任の期数に関する条例 平成19年(2007年)12月21日 |
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(目的) 第1条 この条例は、市長の職に同一の者が長期にわたり在任することにより生じるおそれのある弊害を防止するため、市長の在任の期数について定め、もって清新で活力ある市政運営を確保することを目的とする。 (在任の期数) 第2条 市長の職にある者は、連続して3期(各期における在任期間が4年に満たない場合も、これを1期とする。)を超えて在任しないよう努めるものとする。 2 市長の職の退職を申し出た者が当該退職の申立てがあったことにより告示された市長の選挙において当選人となり引き続き在任することとなる場合においては、当該退職の申立てに係る選挙の直前及び直後の期を併せて1期とみなして前項の規定を適用する。 附 則 この条例は、公布の日から施行する。 |
努めなければならない |
努力が強く求められる場合 |
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努めるものとする |
努力していくことを原則や方針とする場合 |
以下は、私の反対討論です。
陳情第25号・厚木市長の在任の期数に関する条例の誠実な履行を求める陳情について、討論します。
先日、とあるホテルのロビーで「健康増進法第25 条に基づき、ロビーを全面禁煙とさせていただいております。」という表示が目に入りました。この健康増進法第25 条とは、多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならないと定めている規定です。違反に対する罰則は規定されていません。このような「~に努めなければならない」などとされた規定は、努力義務規定と呼ばれることがあります。 |
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これは、参議院法制局が2016年11月に出した「努力義務規定」についてと題する文書の冒頭部分です。全てを朗読すると長いので、続いて最後の部分だけご紹介します。
冒頭の健康増進法の規定が設けられて以降、禁煙や分煙が普及してきており、漸進的な手法として努力義務規定が有効であったのは間違いないでしょう。その一方で、強制力がない以上、限界があるのもまた事実です。 |
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いかがでしょうか? これは、努力義務規定における「努めなければならない」の事例です。 ところで、「厚木市長の在任の期数に関する条例」でも努力義務規定が使われていますが、何と書かれているか思い出せますか? 「第2条 市長の職にある者は、連続して3期を超えて在任しないよう努めるものとする」とあります。
「努めなければならない」と「努めるものとする」は、それぞれ同じ努力義務であっても違いがあります。その違いは、何だと思いますか? 「努めなければならない」は、努力が強く求められる場合です。つまり、健康増進法では受動喫煙防止策が強く求められています。
一方、「努めるものとする」の場合は、努力していくことを原則や方針とする場合に使われます。「市長の職にある者は、連続して3期を超えて在任しないよう努めるものとする」。つまり、ゆるやかな表現が使われています。
今回、「厚木市長の在任の期数に関する条例の誠実な履行を求める陳情」が11月16日に受理されました。陳情の項目は、「厚木市長の在任の期数に関する条例の誠実な履行を求めます」です。しかし、努力義務規定には、それに反する行為を無効または違法だとすることは出来ません。条例の誠実な履行を強制することは出来ません。
ただ、あえて、陳情者の立場に立って11月16日に「条例の誠実な履行」を求めて陳情を出して来たことは理解するとしても、小林市長は12月5日に4選出馬を表明しました。従って、12月5日以降のタイミングで「条例の誠実な履行」を求めても無理があります。
本日12月21日、ボールは私たち議員に投げられています。条例は、自治体独自の法律です。私たち議員は、政治的あるいは感情、保身などで条例を読み込むものではありません。
なお、6月議会では、同じ男性が「市長の連続3期を超える多選禁止の実施を求めます」と題する陳情を提出しました。私はその反対討論の中で、「趣旨採択となった場合、「厚木市長の在任の期数に関する条例」は、どなたかが改正案を今年12月議会までには議員提出議案で出されることが望ましい」と申し上げました。その陳情は、趣旨採択が賛成多数となりました。
国の法律では、努力義務であったものが、一定期間後に強行規定に変わった例が幾つかあります。その一つの事例は、男女雇用機会均等法です。1997年に男女雇用機会均等法は改正されています。厚木市長の在任の期数に関する条例は、2007年12月21日に施行されました。多選禁止を趣旨採択した厚木市議会は、努力規定を強行規定に変更の提案を行う等の責任があります。このまま放置することは好ましくありません。
以上、私は客観的な立場から陳情と厚木市の条例を読み込み、討論を致しました。陳情第25号・厚木市長の在任の期数に関する条例の誠実な履行を求める陳情には、反対します。