厚木市議 高田ひろし通信 on the web 

友人のケニア便り・その2です

ケニア便り(2)98年8月9日号
1.学期末試験
 ケニアの中学校の期末試験は、日本とはかなり違う。中間試験はその学期のその時までに習ったことが試験範囲だけれども、期末試験は、入学した時からその期末試験までに習ったことが、試験範囲になる。だから、1年の2学期の期末試験は1学期と2学期の分だけなのでたいしたことがないが、3年ともなると、1年のときから3年の2学期までなので、生徒も出題する側も準備が大変だ。
 また、4年生は少し違う。4年生は11月に全国共通の中学卒業資格試験(KCSE)というものを受験し、その点数で大学や職業訓練校への進学、また就職まで全て決まってしまう。その予備試験ともいうべきMOCKという州単位での共通テストを期末試験として受験することになる。
 試験期間は1年から3年が2週間、4年は4週間、1日1科目か2科目ずつ受験する。1科目
の試験時間も1時間半から2時間半(MOCKを除いて、先生の好みで設定)と長い。試験問題は、KCSEもMOCKも選択式ではなく記述式だということもあって、記述式の問題だ。また、3年の2学期から、物理、化学、農業の3科目では、実験の試験もある。これも、KCSEのテストが筆記テストだけでなく、実験のテストがあるからだ。ケニアではKCSEの進路に対する影響が非常に大きいこともあって、期末試験はKCSEに備えたテストということもできる。
 私は、1年生の物理と化学を担当しているので、以下はその感想だ。正直いうと、一番大きな感想はこんなにできが悪いとは思わなかった。普段の授業の生徒の反応から、あまり多くを期待してはいけないのは分かっていたので、そんなに難しい問題は出さなかったし、試験範囲が広いから変にヤマを張る生徒がいてそのヤマが外れると悲惨なので、どんな問題をだすか事前に丁寧に教えて、集中して勉強しやすくしたつもりだったのに、駄目だった。1日1科目から2科目だから、かなり自由時間があるのに、その時間に勉強している生徒がほとんどいない。それで、生徒に1日にどれくらい勉強するのか聞いたら1〜3時間だった。これでは、テストの結果が悪 いのも仕方がないとは思った。
 これだけだったら、単なる愚痴でケニア便りに書くようなネタではない。興味深かったのは、他の同僚の先生たちの様子であった。ケニアの初等中等教育の理数科レベルが低い(生徒も先生も)というのは大きな問題で、私の教え子の物理と化学のテスト結果だけが悪いのではない。他の学年の理数科科目も悪い。それで他の同僚の先生が職員室で採点しながらひどい答案を朗読し、生徒のことを馬鹿にして他の教師とともに笑い飛ばしていた。私の感覚では、生徒がよく理解できなかったのは、その授業が失敗だったわけで、少なくとも半分は先生に責任がある。だから、ひどい答案を笑うのは自分を笑うことになってしまうと自分は思う。ところが、こちらの先生は、自分の責任の範囲の捕らえ方が狭くかつ明確で、自分は教えることはきちんと教えた、理解できなかったのは生徒が悪いというものだ。だから生徒が笑える。こう割り切れればどんなにか精神的に楽だろうと思うが、なかなか難しい。一緒にいるアメリカの平和部隊の先生は、こういう時にはケニア人と一緒に笑っていたが、私と二人の時には 、ケニアでのテストの採点は憂鬱だ(depressing)といっていたので、私とケニア人 の中間にいるようだ。
 カンニングも問題だ。小さな机を二人から三人で使っているので、見るなというのが無理な側面もあるのだが、他人の答案を見たとしか思えないような誤答が数多く存在した。ひどっかたのは、答案を返した翌日、その答案を持ってきて、個々の問題の点数の合計とテストの合計の点数が一致しないとクレームしてきた生徒だ。確かに一致しなかったのだが、答案の内容に比べて点数が良すぎる。それでもう一度よく見ると、1を9,4,2というように個々の問題のところに書いておいた数字を書き換えていた。こんなカンニングをしてまで点数が欲しかったら、もう少し勉強をすればいいのに、悲しかった。(ちなみにこの生徒の点数は、大体平均点でした)
 また、1年の化学で大気と水を学習し、大気汚染・水質汚染も習う。それで、今回の化学の期末試験で「なぜ、下水や肥料、洗剤が水質汚染の原因になるのか」という問題を出した。一応授業で説明したのだが、説明したようなことを書いてくれた生徒はほとんどいなくて悲しかった。ここでは下水設備などないので、下水については彼らのイメージが湧きにくい。肥料は、ここの周辺は農地ばかりでほとんどの生徒の家庭で農業を営んでいるので(兼業もあるが)、彼らの経験に基づいた答案が多かった 。洗剤はなぜ汚染の原因になるのか、よく分かっていなかった。総じて、彼らは、人が死ぬか、臭いなど明確に人が悪影響を受けないと汚染とは考えてくれていない。それでは遅く、富栄養化だけで汚染なんだと教えていたのだが、理解してくれていなかった。
 また、1年の化学で大気と水を学習し、大気汚染・水質汚染も習う。それで、今回の化学の期末試験で「なぜ、下水や肥料、洗剤が水質汚染の原因になるのか」という問題を出した。一応授業で説明したのだが、説明したようなことを書いてくれた生徒はほとんどいなくて悲しかった。ここでは下水設備などないので、下水については彼らのイメージが湧きにくい。肥料は、ここの周辺は農地ばかりでほとんどの生徒の家庭で農業を営んでいるので(兼業もあるが)、彼らの経験に基づいた答案が多かった。洗剤はなぜ汚染の原因になるのか、よく分かっていなかった。総じて、彼らは、人が死ぬか、臭いなど明確に人が悪影響を受けないと汚染とは考えてくれていない。それでは遅く、富栄養化だけで汚染なんだと教えていたのだが、理解してくれていなかった。
 しかし、勉強不足を生徒のせいばかりにはできない。私の学校では、使用する教科書は学校から生徒への貸与ということになっている。そして、8月の休みに入る前にその教科書を回収してしまった。これでは、勉強したい生徒も勉強できない。なぜ回収してしまうのか聞いたのだが、休み中に紛失する生徒やこずかい稼ぎのために売ってしまう生徒がいるので、回収するとのこと。勉強する意欲があり、経済的にも余裕のある生徒は教科書を自分用に買うのだが、ごく少数しかいない。
2.パソコン
 パソコンは、ナイロビの青年海外協力隊連絡所、通称ドミトリー(略称ドミ)という施設に置きっぱなしにしている。ここは、青年海外協力隊のメンバーのための宿泊施設(ベッド、台所、風呂、居間、ロッカーなどがある)で、地方の隊員がナイロビに来た時に宿泊するなど溜まり場にもなってる。ここでは、電気も電話も(モジュラージャック)あるので、ここに来た時にパソコンを利用している。配属先のキアティネニ中学校では、発電機が夜しか回らず、学校の電話はモジュラージャックではないの でパソコンを接続することもできない。
 また、パソコンのドメインが、アメリカにあるように見えるけれども、プロバイダーはネット2000というケニアの会社で、アクセスポイントもナイロビなどケニアの主要都市5ヶ所にある。もちろん、学校の所在地にも、最寄りの町のマチャコスにもアクセスポイントはない。
 ただ、学校の先生も生徒もパソコンを見たいと言っているので、いつか機会を見つけ
て持っていこうとは思っている。ということで、今日もこれから出かけなければならず、次にドミトリーにやってくるのは、多分8月28日くらいです。その時に続きがやれると思います。それでは。