ケニア便り(3) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.学期の始まり ケニアの中学校は、公式には8月31日(月)から始まった。しかし、学費を払えない生徒は(注1)学校に来ても追い返され、この日来ていた生徒は、私の学校では在籍250名に対し19名しかいなかった。先生もそれを見越して、約半分しか来ていない。 初日、日本でやるような始業式はなく、毎週月曜朝に行う朝礼(20分)の後、校内の掃除などに費やされた。 自分の最初の授業では、前期末試験の答案の説明をした。しかし、試験が難しすぎて試験当時でも良く分かっていなかった問題だったので、1ヶ月休んだ後ではとても黙って聞いていられる状態ではない。 9月3日(木)になってもまだ生徒はそろっていなかったので、本格的に授業をやるのには早いかなと、これを機会に前からやってみたいと思っていたアンケートを実施することにした。 |
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注1:学費は、年間3つある学期毎に払う。学費は、学校によって異なるが、私の学校では、通いの学生で年間約2万円、寮に入っている学生で約5万円。1学期(1〜3月)に半分近く払い、3学期(9〜11月)は一番少なく払う。しかし、一人当たりGDPが5万円に満たないケニアでは大金であり、これがネックで学校に行かない生徒が少なくない。政府から派遣されている先生の給料は、政府から支給されているので、この学費はその他の費用(学校の設備の維持管理、学校の雇っている職員(若干(私の学校では3人)の教員、会計、タイピスト)の人件費など)に充てられる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2.アンケート アンケートの対象は、自分が物理と化学を担当している1年生。在籍81名(男子48名 、女子33名)に対し、46名(男子25名、女子21名)が出席。これらの生徒は、当校の中では授業料を比較的楽に払える経済的に豊かな生徒である可能性が高いので、無作為抽出とは言えない。アンケートは、無記名(性別のみ記入)、黒板に質問を英文で書き、配布した紙に回答を記入してもらうという方法で行なった。 |
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(1)好きな科目(複数回答あり)
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(2)嫌いな科目
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この12教科が当校の1年生の授業科目の全てである。自分が教えている物理と化学が、嫌いな科目上位3科目の内2科目を占め、化学を好きな生徒は一人もいないというのは、覚悟していたことではあるが、いささかショック。今後の授業のやり方を相当変えなければいけない。 理由もあげてもらったが、好きな理由は優しいとか、スワヒリ語のように使っているから、英語のように世界中で使われているから、という理由が多かった。嫌いな理由は、教科に関係なく難しいというものが大部分。 当校は、旧ハランベー校と呼ばれる学校で公立に属する。しかし、ケニアではキリスト教などの特定の宗教が正式な教科として教えられている(モスリムなども学校によっては選択も可能)。 |
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(3)学校生活で一番面白いもの
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ここは少し解説が必要。学校によって異なるが、当校では月・火・木曜日の4〜5時は「ゲーム」と呼び、サッカー、バレーボールなどのスポーツに充てている。サッカーもゲームの一部だが多かったので上記では別枠にした。水曜日の4〜5時は、「クラブ」で科学クラブ、野生生物クラブ、キリスト教クラブなどがある。ここもなぜか
科学クラブが多かったので、別枠にした。また、金曜日の4〜5時はdevotionお祈りということで、外部から講師を呼び、キリスト教関係の説教を聞いたり、讃美歌を歌ったり、歌に合わせて踊ったりしている。この4〜5時のクラブやゲームは全員が何かに参加していることになってはいるが、サッカーで言えば、ゲームをしている22人以外はグランドの周囲で見学しているだけであるし、科学クラブも実態はおしゃべりの時間に近いものがある。この4〜5時はそれ以外でも学校のいたるところでおしゃべりをしている生徒がおり、あまりきちんと実施されている訳ではない。 人気の高い「サッカー」と「科学クラブ」の顧問の一角を私も占めている。だから、 そう書いてくれたのかもしれないが。サッカーはケニアで最も盛んなスポーツなので予想していたが、科学クラブの人気が高かったのは、ちょっと意外だった。 |
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(4) 将来の仕事
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職業の日本語訳に自信のないものは、合計の数字の次に実際の回答を書いた。嫌いな科目に物理、化学が多かった割には、科学クラブとエンジニアの人気が高いのは、やはり少し不思議な気がした。逆に農家の子供が多いのに農業と言う答えがないのは、そういうものなのかもしれない。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(5) 最も大事なもの
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ボーイフレンドと書いたのは男子生徒なのだが、多分深い意味はないと思う。神様または宗教と書いた生徒が46名中39名と極めて多い。これは、ケニアにきてから一貫してキリスト教の影響が強いと思っていたので、予想通りではある。ちなみに学校の先生も敷地内の協会もプロテスタントだが、隣村にはカトリックの教会があり、 この地域でどちらが主流ということはないようだ。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(6) 一番欲しいもの
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ここでは、ガールフレンドと書いたのは女子生徒だが、多分深い意味はない。質問の出し方が悪かったのか、「サッカー選手になりたい」とか「私のハート」とちょっと趣旨と違う答えが返ってきてしまった。本という答えが最多だったのはちょっと意外で、翌日教室でどんな本なのか聞いたところ、小説(ロマンスとか)ということだった。僕の配属先の村の市場で新聞・本などの印刷物が売られているのは見たことがなく、ここでは本は貴重品になっている。それだけの経済力がないせいもあるし、お金を出してまで読もうという意識が大人にも少ないのだと思う。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(7) 行きたいところ
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日本は、自動車、時計、カメラなどの生徒たちがあこがれる工業製品の多くが日本のメーカー製だから。アメリカは留学したい。ケニアは母国なので。ナイジェリアはアフリカ最強のサッカー国だから、フランスはワールドカップの影響でここでもサッカー好きが現れている。ジャマイカは、レゲー(ボブマーレー)のためだった。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(8) 学校からの貸与ではない自分の教科書を持っているか
ほぼ半数以上というのは、ちょっと意外だった。ただ、最初に書いたように当日来ていた生徒は比較的経済力のある生徒かもしれない。数学の教科書の保有率が多いのは、好きだから買ったのか、持っているからよく勉強し良く分かるようになり好きになったのか、これは今後の課題。 |
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(9) 家庭の職業
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職業が複数なのは、父親と母親の共稼ぎだから。パブリックワークは、辞書を引くと公共(土木)事業と書いてあるが、具体的に何を指すのかは、良く分からない。 大部分が農業かと思っていたのだが、2割も他の職業がいた。農業だけでは、子供の学費を負担するのが大変なのかもしれない。職業別子供の進学率というデータが得られないものだろうか。 |
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初めてやったアンケートではあったが、なかなか面白いデータが得られた。もう少 し質問の出し方を工夫して、違う学年でもやってみたい。 |
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