ケニア便り(その7:99年1月6日号) | ||||||||||||||||||||||||
青年海外協力隊の隊員は、2年間の派遣期間中に一回、3週間派遣国以外の国に行く事ができる。これは、任国外旅行と呼ばれている。私は、ケニアの学校の一番長い休みである12月休みを利用して、その任国外旅行で昨年末にタンザニアに行ってきた 。また、ケニアに帰ってきてから引き続きケニア山にも登ったので、それも合わせて書いていきたい。 | ||||||||||||||||||||||||
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1. タンザニアの首都、ダルエスサラーム(首都は内陸のドドマに移行中) 先進国でも途上国でも首都というと、例外もあるけど、人が多くてゴミも車も多くて空気も汚くて、と僕はあまりいいイメージをもっていない。その典型がケニアの首都ナイロビなので、そのナイロビからダルエスサラームに着くと、その差に驚いてしまう。空港と市内を結ぶ道路はよく整備されていて、ああ首都なんだなと思わせるものの、市内に入ってもそんなに人もいないし、ゴミも車も少なくてストリートチルドレンもいないし、思わずほっとしてしまう。赤道直下の熱帯の海岸に位置しているので、日中はとても暑いが朝晩は涼しいし、のんびりしていて地方の観光都市のような雰囲気さえ感じてしまう。確かにそれは、経済が発達していないタンザニアの貧しさを象徴しているだが、ストリートチルドレンが少ないのは、貧富の格差が少ないことを示しているとも言える。 |
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2. 珊瑚礁と豊かな緑の島、ザンジバル ザンジバルは、アフリカ大陸から40km沖合いのインド洋に浮かぶ面積1658km2ほどの細長い島である。日本でアフリカ観光というとマサイマラ(ケニア)やセレンゲティ(タンザニア)に代表されるライオンなどの野生動物を見るサファリを連想しがちだが、それだけではない。ザンジバルは、美しい珊瑚礁と森林に恵まれているのに加え、8世紀以降アラブとアフリカ本土との貿易基地として栄えた歴史をも持っていて、観光地として大きな魅力がある。 |
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ここでは、私のザンジバルでのエピソードを一つ。 ザンジバルでの最後の夕方、ダウ船という木製の小さな帆船にのって夕陽を見るサンセット・クルーズをしませんかと客引きに呼び止められ、それに乗ることにした。 |
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追い風に乗って沖合いに出て、夕日を見て、6時半すぎいざ島に戻ろうとするのだが、いつまでたっても陸地が近づかない。二人のタンザニア人が一生懸命帆を操作しながら「ハクナ・マタタ(スワヒリ語で、問題なし)」を繰り返すので、かえって「ヤバイ」のかなと心配になる。結局8時過ぎ、諦めて「風と潮の流れが悪くて島に帰れないので、ここに錨を下ろし、寝ることにする」ということになってしまった。 僕は夕方2時間の軽い舟遊びのつもりだったので、海水パンツにTシャツといういでたちでしかない。でも仕方ないからみんなで帆にくるまって寝ることに。でも、舟は揺れるし、夜は冷えるので寒いし、なかなか熟睡できない。すごく惨めな気持ちになっていたのだが、ふと帆から顔を出して空を見ると満点の星空でとてもきれいな夜だった。流れ星も見えたし、結構贅沢をしているような気持ちにもなってきた。 明け方前になって錨を上げ、舟を帰そうとするのだが、今度は風が弱くて、舟が動かない。この日の朝早い飛行機でキリマンジャロに向かう予定だったので、気が気でない。朝日がきれいなんだけど、そんなのを鑑賞している余裕もない。結局、近くを通りかかったエンジン付きの漁船に乗せてもらい、島に帰って、ギリギリ飛行機にも間に合った。 結果オーライだけど、冷や冷やの経験だった。 |
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3.キリマンジャロ登山 キリマンジャロ山は、標高5895mのアフリカの最高峰。山好きの私としては捨てられない、今回のタンザニア旅行のメーンだった。 タンザニア政府の規制で、登山は旅行代理店がアレンジするツアーに参加するという形で行わなければならない。普通5日間か6日間かけて登る。高い山の上は空気が薄い。それに体を慣らすために途中同じ山小屋に2泊するのが6日間ツアーだ。絶対に登りたかったので、一番易しいマラング・ルートからの往復で6日間ツアーとした。 登山道はよく整備されていて、歩くのは問題がない。日本にはない雄大な景色や珍しい植生に見とれながら歩いていると、その日の日程が終わる。 |
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問題なのは、登頂の日だ。その日は、標高4700mの山小屋に泊まるのだが、ここですでに富士山より1000mも高いから高山病にかかりやすい。それを防ぐために6日間ツアーにしたのに、僕も高山病にかかったのか、頭痛があって、良く寝られなかった。 | ||||||||||||||||||||||||
出発は、朝というより深夜の1時。そのために12時に起きて、紅茶とビスケットをかじってそれだけで出発。小屋の中は寒くなかったが、外はさすがに寒い。気温はマイナス5℃くらい、風もあって冷える。我慢して星空に励まされながらゆっくり登っていくと、薄明るい明け方の5時半に火口の外輪山の一角ギルマンズ・ポイント(標高5680m)に到着する。それから日の出に赤く染まる氷河を見ながら外輪山に沿って歩いていって、最高峰のウフル・ピーク(標高5896m)に7時半にたどりつく。 ここでアフリカ最高峰からの景色を十分楽しむべきなのだが、疲れていたのか、実はあまり良く覚えていない。でも、ギルマンズ・ポイントに出た時と、外輪山を歩きながらみた景観のほうが美しかったと思う。 この後、昨日泊まった山小屋まで下りて12時前にまたビスケットと紅茶、それから再び標高3700mの山小屋まで下りる。空腹と疲労と寝不足でかなりきつい一日だった。 |
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4.キリマンジャロ村落林業プロジェクト見学 キリマンジャロ登山の基地の町モシから車で2時間弱のサメという村で、林業プロジェクトが日本政府の協力で行われている。そこに派遣されている日本人専門家の方に案内していただいた。 その一帯は半乾燥地でそれほど豊かな森林だった訳ではない。その乏しい木が薪炭材として伐採され減少している。そこに植林を普及させようというプロジェクトで、1991年に始まったものだ。 失敗の連続で、その残骸を数多く見せてもらった。日本のODA(政府開発援助)が、いかに人材難で管理能力がないかという事を見せつけられる。現在は住民参加を図りながら立て直そうとしているといったところか。時間がなくて、あまりゆっくり見ることが出来なかったのが残念だった。 |
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5.セレンゲティ国立公園、ンゴロンゴロ自然保護区サファリ あまりにも有名なところであり、一度は行ってみたかったところだ。その期待に十分答えてくれた。ライオン、チータ、アフリカゾウなどの動物だけでなく、景観だけでも飽きることなく過ごすことが出来る。 国立公園と自然保護区と名称に違いがあるのは、自然保護区内では、人の生活が認められているということらしい。実際、ンゴロンゴロ自然保護区内にはマサイの人たちが生活している。このマサイの人たちは、牧畜を営むだけでなく、道端に民族衣装で立ち、時に踊りながら僕ら外国人観光客が通りすがるのを待ち、写真を撮らせ、金をもらう。 サファリを案内してもらうガイドが、動物が見えた時に単に「ゾウ」とか「サイ」 とか名前を教えてくれるだけで、生態とかの説明をしてくれなかったのは残念だった。聞けばそれなりに教えてくれる時もあったし、隣にいた他のガイドが説明しているのを盗み聞きしたりした時もあった。どうも日本人は名前を教えて写真を撮らせれば満足すると思っているように感じてしまったのだが、どうだろうか。 |
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6.ケニア山登山 ケニア山は標高5199mの火山であり、ケニアの最高峰、アフリカ大陸では、キリマンジャロに次いで2番目の高さを誇っている。ただし、その最高峰バチアンは、岩登りの技術が必要で、残念ながら私のような一般のハイカーは登れない。一般のハイカーは、標高4985mのレナナ峰登頂をもってケニア山登頂とする。私もレナナ峰にのみ登った。 今回、北面のシリモン・ルートから登り、東面のナロモル・ルートに下りる予定だったが、ナロモル・ルートは天気が悪く雨が多くて道もぬかるんでいて歩きにくいということで、シリモン・ルート往復になってしまった。いずれにしても、3泊4日の日程である。 キリマンジャロが、登山口の標高1980mから山頂の5896mまで、約4000mを登るのに対し、ケニア山が標高2650mから4985mまで2000m強にすぎない。レナナ峰登頂の時も、小屋を出てから2時間で山頂に到着できる。自分の場合、キリマンジャロ登山の直後だったせいか、高山病にもまったくならず、体力的にも極めて楽な登山だった。 |
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でも、山としてはケニア山の方が好きだ。 キリマンジャロは本当に大きくて下から見た時の美しさは際立っている。きれいなコニーデ型の火山で、言ってしまうと富士山的な山である。 ケニア山は、キリマンジャロより古い火山で、昔(数百万年前)は今より1500mくらい高かった(つまり、キリマンジャロより高かった)と信じられている。氷河時代に氷河によって侵食され、複雑な地形になっている。僕がとったルートのせいもあるのだろうが、ケニア山のほうが地形的にも植生的にも変化があって楽しかった。 また、登頂の日、ケニア山では月明かりの下を登ったので、星の数はキリマンジャロより少なかったけれど、ケニア山の険しい岩と雪の対称が月明かりに浮かび上がり 、それと星空のコントラストもとても美しかった。もっとも、その感動をケニア人の登山ガイドに言ったら、キョトンとしていて、見慣れているから以前の問題として全く美しいとは思ってないみたいで同意が得られずさびしかったのだが。 |
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7.その他 キリマンジャロ、セレンゲティ、ンゴロンゴロ、ケニア山と巡り歩いてきたが、日本の国立公園・保護区との違いは、ゴミの少なさだ。訪れる登山客・観光客の数が違うが、それにしても、ここでは滅多にゴミが落ちていない。だから余計美しく見える。 もちろん、これらの国立公園・保護区で何も問題がないかといえば、そんなことはない。 ンゴロンゴロ保護区でサイを4頭見ることが出来たが、ガイドの話では、この保護区には現在6頭しかいないという。 キリマンジャロの登山中に子供たちが木の皮をはいでいたのを見た。なぜかと聞くと、公園内では枯れ木しか集めてはいけないことになっているので、枯れ木に見せかけるために皮をはいでると言っていた。また、キリマンジャロでは登山客の料理にも木が使われているので(ケニア山では灯油)、登山客が増えれば、木の伐採量も増加する。 また、まだまだ周辺地域も保護区内も人口が少ないので、国立公園・保護区への人の影響は少ないが、今後、人口が増加した時に、また、彼ら一人当たりの資源の消費量が増えた時に、どうなるかも心配だ(もちろん、先進国の人間よりはるかに少ないはずだが)。 |
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