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週刊金曜日 1996年11月22日 |
「三年と一ヶ月間、四四三坪の事務所を無料で貸します」----。もしこのような条件の貸し事務所があれば、全国から申し込みが殺到するだろう。本当にあった話なのだ。 神奈川県厚木市と民間企業による第三セクター「厚木テレコムパーク」が管理・運営 している「厚木アクスト」という二十六階建てのビルがある。交通の便に恵まれる東名 高速道路厚木インターの近くに位置する。 しかし、バブル経済崩壊後に完成したこのビルにはテナントが全く入らず、厚木市は 頭を抱えていた。そこへ入居したのが、昨年度に十六億五000万円の補正予算がつい た郵政省の特殊法人「厚木リサーチセンター」だ。 ところが、調査の結果、ビルの七階フロアすべてを使っている厚木リサーチセンター は、今年三月一日から一九九九年三月三十一日までの間、「無料賃貸契約」という驚く べき条件で入居していることが分かった。 現場に行ってみると、四百四十三坪のフロアに常駐する職員はわずか六人にすぎない 。民間企業では考えられないほどの贅沢さだ。 「無料賃貸契約」の理由を問い合わせたところ、大家側の厚木テレコムパークは「キー テナントとしての入居だから」と理由づける。一方、店子側の厚木リサーチセンターは 「テレコムというよりは、厚木市の誘致があったから」と説明する。ちなみに市側は「 テレコムの判断」と、三者のいい分は微妙に食い違う。 「厚木テレコムタウン構想」からできたこのビル自体が、官・民・業癒着のシンボルに なっている。厚木市や出資企業にとっては、「バブルの塔」として、負担が重くのしか かっているのだ。 厚木市企画部長は「テレコムの事業がいつから軌道に乗るとは言えない」と市議会で 答弁している。砂に水。テレコムに税金。砂上の楼閣はいつまで建ち続けるのか。 入居の経緯など、さらなる調査が必要だ。 |
(厚木市議 高田浩) |